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第16回 日立財団科学技術セミナー「光格子時計〜時空のゆがみを見る時計」開催(オンライン開催)

今回の科学技術セミナーは、量子エレクトロニクスの分野で原子時計の研究をされている香取 秀俊氏(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 教授、理化学研究所香取量子計測研究室 主任研究員)を講師にむかえ、日本発の最先端研究に迫ります。

皆さんは「1秒」の長さがどのように決められているかご存知でしょうか?香取氏が2001年に提案した「光格子時計」は、現在の1秒の定義であるセシウム原子時計の精度をはるかに凌駕するもので、その正確さは実に300億年に1秒の誤差というものです。今、この日本発の技術は、次の「1秒」の長さを決める秒の再定義の最有力となっています。
私たちは、どこにいても同じ速さで時間が過ぎていると思い込んでいますが、アインシュタインの相対性理論によると、重力が強い場所では遅くなり、弱い場所では早くなるなど、時間の進み方は高さや運動によって僅かに違ってくるのです。高精度な光格子時計では、このごく小さな歪みをも計測することが可能となります。未来の時計は時間を測るだけの道具ではない新たなセンシング技術となり、世界を大きく変えるかもしれません。本講演では、最先端の研究、実験の紹介のほか、社会実測された先で新しい役割を担う、未来の時計についてお話いただきます。

なお本開催は、新型コロナウイルス感染防止のため、オンライン(Zoom)で開催いたします。
多数のご参加をお待ちしております。

開催概要

テーマ 光格子時計〜時空のゆがみを見る時計
講 師 香取 秀俊氏(Katori Hidetoshi)
(東京大学大学院工学系研究科 教授、理化学研究所 香取量子計測研究室 主任研究員)
日 時 10月31日(土) 13:30〜15:00
会 場 オンライン開催(Zoomウェビナーシステム利用)
参加費 無料

参加方法

下記の申し込みフォームからご登録ください。
※お申込みいただいた方には、ご招待URLをご登録のアドレスに電子メールにてお送りします。

申し込み終了

(ご参加にあたってのお願い)
※参加にはパソコン、タブレット、スマートフォンなどの端末と、ネット環境が必要です。
※本セミナーはオンライン開催とし、Zoomウェビナーを使用します。初めてzoomを利用される方は、事前にzoomアプリのダウンロードをお願いいたします。※アカウントの登録は不要です。
※その他ご不明な点、接続に関する詳しい手順は、下記の手引書をご参照ください。

※お申込みの際「香取先生に聞いてみたいこと」として、事前の質問・コメントを募集しています。当日の質疑応答時間でご紹介させていただきますので、ぜひご協力をお願いいたします。なお、質問は当日もQ&Aで受付いたします。

内容紹介

原子時計の高さを変えると時間の進み方が変わる
原子時計の高さを変えると時間の進み方が変わる

時計は、万人で共有できる普遍な周期現象を使って、時間を共有するための道具でした。20世紀の半ばまで、時間は地球の自転をもとに定義されていました。このような天文学的な秒に代わり、1967年からは物理学者が時間を決めるようになりました。セシウム原子時計は、地球の公転よりも遥かに規則的にマイクロ波の振動を刻み、6000万年に1秒しか狂いません。原子時計を搭載したGPS衛星との距離を測って、自分の位置を割り出すカーナビは、現代版の天体航法です。こうした原子時計は現代社会に深く浸透し、日々の生活に不可欠な技術です。
今世紀に入って、光の発振器であるレーザーを使う光原子時計の研究が飛躍的に進展しました。マイクロ波に比べて1万倍以上も振動数が高い光の振動を使うと、時計の精度はその分(1万倍)向上する可能性があります。私たちは、2001年に「光格子時計」と名付けた新型原子時計の開発に着手しました。レーザーの干渉縞で作る微小空間−光格子−に閉じ込めた数千個の原子が吸収する光の振動数を精度よく測定し、超高精度な時間を読み出す企てが始まりました。現在、光格子時計は100億年経っても1秒も狂わない高精度を実現します。
このような超高精度で時間が読み出せると、日常的な時間合わせにも、相対論的な「時空」の歪みが顔を覗かせます。時計をわずか1cm地面に近付けるだけで、重力が強くなった分ゆっくり進む時間を読むようになると、時計は重力で歪んだ時空間を探る道具です。万人で時間を共有するための道具だった時計の役割は、大きく変貌するでしょう。
光格子時計の研究の最前線をご紹介し、未来の時計が担う新たな役割を考えていきます。

講師プロフィール

香取秀俊 氏 (東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 教授 理化学研究所 香取量子計測研究室 主任研究員)
講師 香取秀俊 氏


香取 秀俊(Katori Hidetoshi)
東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 教授
理化学研究所 香取量子計測研究室 主任研究員

茨城県立土浦一高等学校卒業。1990年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。1991年 同博士課程中途退学、東京大学工学部助手などを経て、1994年 ドイツ マックスプランク量子光学研究所 客員研究員。1999年 東京大学工学部 助教授、2010年より東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 教授。2011年より理化学研究所 香取量子計測研究室 主任研究員、2015年より理化学研究所 光量子工学研究領域・時空間エンジニアリング研究チーム チームリーダーを兼務、現在に至る。博士(工学)。
2010〜2016年 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業 ERATO香取創造時空間プロジェクト研究総括、2014年よりドイツ チュービンゲン大学Distinguished Guest Professor、2018年より科学技術振興機構・未来社会創造事業 研究開発代表者などを務める。ユリウス・シュプリンガー賞、ラビ賞、紫綬褒章、日本学士院賞、江崎玲於奈賞など、受賞多数。

お問い合わせ

公益財団法人 日立財団
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