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PIONEER TALK Vol.6 YUMIKO ARAIPIONEER TALK Vol.6 YUMIKO ARAI

建物をつくるということ。
何もない真っさらの土地でゼロからスタートするもの〜想いをかたちにしていくとても面白い仕事です。

PROFILE

荒井 由美子さん
株式会社竹中工務店

PROFILE

2007年3月 東京理科大学理工学部建築学科卒業。
2007年4月 株式会社竹中工務店に建築技術職として入社。
入社後1年、大阪での新社員研修を受け、東京へ配属。
これまで都内の集合住宅、商業施設、オフィス等、建物解体から新築まで5件の現場を担当。現在に至る。

第一線で活躍する理工系女子の先輩にお話を聞く対談シリーズ。今回のゲストは、建築分野の中の施工管理というお仕事で活躍されている竹中工務店の荒井由美子さんです。
前回のVol.5では都市デザイン・街づくりにフォーカスし、人が暮らしやすい快適で美しい街をつくるための工夫などについてお話いただきましたが、今回は、そうしてデザイン・計画された建物や街を実際にかたちにしていく、建物をつくる仕事のお話です。
建築主や設計者の想いを実現するため、建設現場ではどんな人たちがどんな仕事をしているのでしょうか。
2020年夏にオープンした渋谷区の「MIYASHITA PARK」のプロジェクトを手掛けられた荒井さんに、プロジェクトでの経験談や建築の仕事の魅力についてお聞きしました。

聞き手:荒木 由季子(株式会社 日立製作所 理事)

「MIYASHITA PARK」
プロジェクト。
新しいことにチャレンジしながら今までにない施設を作り上げていく

荒木:
「MIYASHITA PARK」のプロジェクトのお話からお聞きしたいと思います。今私たちは「MIYASHITA PARK」のホテルにいますけれども、建築技術職としてこのプロジェクトを手掛けられたということで、まずは全体の概要についてお話を聞かせていただけますか。
荒井:
このプロジェクトは、渋谷と原宿の中間に位置しており、長さ約360メートル、低層階に商業施設、屋上に公園、それから高層棟としてホテルがあるという、さまざまな施設が融合した特徴のある建物です。また、都内ではここまでの広い敷地に建つ建物というのはなかなかないので、そういった意味でもシンボルとなるような建物ではないかと考えています。
荒木:
このプロジェクトをやっていて、どんなところが面白く、わくわくする部分でしたでしょうか。
荒井:
今までにない施設をさまざまな新しいことにチャレンジしながらつくり上げていくというところに非常に面白さを感じました。
荒木:
このプロジェクトは最初から終わるところまで、完成まで関わられていらっしゃったのですか。
荒井:
このプロジェクトには、途中から参画しました。建物を作るのには設計図とは別に、実際どのように作るかを示した図面(施工図)が必要です。今回は施工図を作り上げていくところを担当しました。施工図は、当社と、建築主、設計者、専門工事を担当する協力会社と合意した上で作っていく図面です。作業工程を踏まえた上での図面作成、多くの関係者との承認調整、全体スケジュールの管理を担う重要な役割でした。
荒木:
何かご苦労されたところなどありますか。
荒井:
MIYASHITA PARKは非常に長い敷地で、敷地いっぱいに建物が建っています。完成してしまうとわかりにくいですが、通常建物を作る際は、下から順番に作られていき、その順番で施工図面が必要になります。敷地条件により、今回は建物を横に移動しながら作る工法を採用したので、通常段階を追って進んでいく躯体工事、外装工事、内装設備工事が、同時並行で進んでいきました。そのため、それぞれの図面に着手するタイミングが早まり、短期間で決めていくべき内容が増えます。さらに繰り返し同じ箇所がない複雑な形状をしているため、一つ一つの図面作成にも時間がかかりました。関係者で一致団結して進めなければ、成しえないことでした。しかし、苦労ではありましたが、施工者としての1つの醍醐味でもありました。
荒木:
さまざまな関係者がいらっしゃると思うのですけれども、何か、そういう多様な方々と一緒に仕事をやっていく中での難しさや、こんなことが大変だったということはありますでしょうか。
荒井:
建設は多くの人が関わる大きなプロジェクトです。今回は、プロジェクト関係者の皆さまの思いが同じ方向を向き、プロジェクトを成功させようという強い想いを共有しながら進めることができたので、難しかったというよりは非常にやりがいがある仕事であったと感じます。
また今回、この建物が竣工(しゅんこう)する直前にコロナの影響を受け、今まで普通に進められていたことが、なかなかできないこともありました。
しかし、そのような状況下においてもやはり、建物を完成させてオープンし、皆さまに使われる施設を作ることが関係者全員のゴールであったのでこのような困難を乗り越えることができたと思いますし、それが今後につながるスタートでもあると感じています。

「MIYASHITA PARK」プロジェクト
立体都市公園制度を活用し公園・駐車場・商業施設・ホテルが一体となった施設。
1966年に東京初の屋上公園として整備された渋谷区立宮下公園を、バリアフリー動線の確保や経年変化による耐震性の課題解決のほか、防災意識の高まりや来街者の増加といった社会変化に対応するため、民間のノウハウも活用して、さらに魅力的な「広域利用公園」となるように再整備するためのプロジェクト。
2020年夏オープン。