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PIONEER TALK Vol.6 YUMIKO ARAI

女子中高生へのメッセージ。学生の期間は、本当にかけがえのない、
その時しかできないことがたくさんある時だと思います

荒木:
今でこそ、いわゆる理系や工学系に進んでその後もそういった分野で活躍する女性が多くはなっているのですけれども、やはり中学生や高校生が自分の進路を考えるときに、工学系や理系というと、ちょっと引いてしまうところもあります。そこのところに関して、ぜひこれまでのご自身のご経験を踏まえて、応援メッセージをいただけますか。
荒井:
建築、特にその中でも建設というのは、なかなか触れることがない分野だと思うのですけれども、就職活動をしている学生さんなどの中には、たまたま近くを通って、建物ができていく過程を見て興味を持ったとか、そういった小さなきっかけから建築学科に進まれる方も非常に多いです。例えば、子どもの頃、お家を建て替えたこととかがスタートになっている人が多いかなというふうに思っています。そんな小さなきっかけでも、何か興味を持ったことに関して、自分で調べてみたり、いろんな所に行く一つの動機になればいいかなと思います。
建築っていうのは、本当に何もない真っさらの土地でゼロからスタートするものですが、自分自身の年齢と、その土地と、その季節を重ねてプロジェクトができていくさまを、体に刻み込めるようなところがあり、何年前、いつ、自分が何をしていたかなというのは、すぐに思い出せるような、特徴のある仕事だと思っています。その土地の雰囲気もそうですし、周りの環境も含めて、いろんな経験をしていけるような分野になるので、ぜひ建築に少しでも興味を持ってくれる人が増えればいいなと思います。
荒木:
お話を聞いていると、自分が手掛けたプロジェクトが、何か、子どもを見ている感じに話しておられるなと思いました。そういった意味では、ちょっと男性っぽい社会のように見えるのですけれども、意外と女性に向いているのかなと思ったりします。その辺はどうですか。
荒井:
男性も多いですけれども、そのプロジェクトに手を掛けていくというところは、女性的な側面もあるのかなと思います。自分が大切に思った建物が完成していくことを見守ることは、自分の子どもの成長を見守るようなものです。そういう自分の思い入れをいろんなところに残していけるようなことになるので、非常に楽しい仕事だと思います。
荒木:
すごく楽しそうな感じで、一つ一つのプロジェクトについて、思いがあふれる感じがして、きっと女性がやると面白いのではないかと、ひしひしと感じます。ただ逆に、一般的なイメージは、どうしても男性的なイメージがあって、何かそういったことを、就職のところの以前の問題として、もっと早い時期に、いろいろ知ってもらったほうがいいのではないかと思われることはありませんか。
荒井:
うちの会社の現場にも、小中高生に来ていただいて「こういったことをやっているよ」といった見学をしていただくこともあるので、ぜひ、そういった機会があれば参加していただいて、どんなことをやっているのか、見に来てもらえればと思います。
荒木:
そういう見学会は、女性の生徒さんも来られますか。
荒井:
女性向けの会もあります。工学系の高校に通われている方を対象にしている場合もありますが、女性の方も多くいらっしゃるので、ぜひ、一つ興味を持っていただくきっかけになればなと思います。
荒木:
今後そういう、本当は女性だけというわけではないと思うのですけれども、こういった分野に、もっと若いときから、女性にも興味を持ってもらうということについて、ご自身として、こんなことやっていきたいななんていうことはありますか。
荒井:
こういう仕事をしている人もいるんだなという道筋が見えると、より具体的に、自分の人生の目標と重ねやすいのかなと感じます。私自身も、誰かの1つの選択肢になっていければいいなというのを日々感じているところです。
荒木:
では最後に一言、若い女性たちにメッセージをお願いいたします。
荒井:
学生の期間というのは、本当にかけがえのない、そのときしかできないことがたくさんあるときなので、やはり私は、よく遊んで、そのときしかできない経験をしてもらうのが一番いいなと思います。「どういうことを勉強していったらいいですか」ということも聞かれますが、やはり仕事の中で覚えていけることもたくさんあるので、今しかできないことをたくさん経験してもらって、自分の人生を選んでいってもらえたらいいなと思っています。

  • 【聞き手】
    荒木 由季子
    株式会社 日立製作所 理事
    サステナビリティ推進本部長

  • <プロフィール>
    1983年3月東京大学工学部卒業、1983年4月通商産業省入省。1988年8月米国マサチューセッツ工科大学院(政治学科政治学科)修了、1998年6月通商産業省機械情報産業局医療・福祉機器産業室長、その後、経済産業省商務流通グループ博覧会推進室長、国土交通省総合政策局観光経済課長、山形県副知事、2012韓国・麗水国際博覧会日本政府代表等を歴任。2012年12月株式会社 日立製作所入社、現在に至る。