Sri Juari Santosa
インドネシア・ガジャマダ大学
Professor of Department of Chemistry, Faculty of Mathematics and Natural Sciences
日立スカラーシップ種別:博士課程留学支援プログラム(1991年4月〜1996年3月、慶應義塾大学修士・博士課程)
2022年度 日立財団アジアイノベーションアワード「最優秀賞」受賞者
私は現在、飲料水や生活用水として安全な水源を確保するための科学研究に取り組んでいます。また、人の健康や環境にリスクをもたらす有害物質を検出するための携帯型機器の開発も行っています。
安全な水の生成には、層状複水酸化物(LDH)に由来する陰イオン性粘土材料を用いており、これは製造が容易で、低コストかつ再利用可能です。一方、携帯型検出機器は、デジタル画像処理とAIを統合した多接続型比色法を採用しており、専門的な操作や安定した電源を必要とせず、迅速かつリアルタイムで現場分析が可能です。このような手頃でアクセスしやすい機器は、幅広いユーザーに恩恵をもたらしています。
日立国際奨学財団からいただいた奨学金は、私のキャリアに大きな影響を与えました。当時、インドネシアの学生が奨学金を得るのは非常に困難であり、この奨学金はまさに「命綱」のような存在でした。日本という先進国の大学で学ぶ機会を得られたことは、私にとって非常に貴重でした。
学問的な知識だけでなく、規律、努力、責任感、他者への敬意といった人生の教訓も得ることができ、これらは私のキャリア形成において欠かせない資産となっています。
2022年に受賞した「日立財団アジアイノベーションアワード最優秀賞」は、社会に貢献する持続可能な科学活動を続けるための大きな励みとなりました。
最初に印象的だったのは、インドネシアからの長旅を終えて日立国際奨学財団のオフィスに到着した直後、東京駅近くで昼食に招かれたときのことです。そこではスプーンがなく、箸しかありませんでした。私はそれまで箸を使ったことがなかったため、食事に苦労しました。
もう一つの印象的な出来事は、日本に来て約4か月後の1月末、初めての大雪の日です。私は研究室を飛び出し、雪景色に魅了されて雪遊びを始めました。それを見た指導教員は、私が一人で外にいるのを気の毒に思ったようで、研究室の学生全員に外に出て一緒に雪遊びをするよう指示してくれました。
私が特に好きな日本の都市のひとつが広島です。原爆ドームを訪れる機会がありましたが、この建物の遺構は、世界平和と核兵器廃絶への人類の希望を象徴する記念碑です。
原爆ドームの保存は、科学技術の乱用によって引き起こされる悲劇の記憶を常に思い起こさせてくれます。このメッセージは今も私の心に響いており、私の研究活動が常に社会に貢献するものであるよう努力し続けたいという思いを強くしています。
日立国際奨学財団は、これまで東南アジアの優秀な若者たちに学びとキャリア形成の機会を提供してきた先駆的な存在です。私は、現在の日立財団がこの使命を今後も継続してくださることを願っています。
さらに、アジア、特に東南アジアの科学者たちが国際舞台で活躍できるよう、研究支援や人材育成のための施設や資源の提供にも積極的に取り組んでいただけることを期待しています。
2012年10月、ケニア・キスムの小学校で、UNESCO/DAAD同窓会会議「Water in Africa」の一環として、清潔な水の重要性について啓発活動を実施。会議はマセノ大学、ボンド大学カレッジ、EXCEED、DAAD、ドイツ連邦経済協力開発省、UNESCOの協力で開催された。
2016年4月、インドネシア・ジョグジャカルタでの微粒子・エアロゾルのモニタリングに関する研究協力について、慶應義塾大学の田中茂教授と議論。
2017年3月、インドネシア・ジョグジャカルタで開催予定の「国際イオン交換会議2018」の企画について、当時上智大学学長だった早下隆士教授と日本イオン交換学会の島津章吾会長と協議。
2023年12月、千葉大学の副学長(研究・産学連携担当)武井正弘教授の研究室を訪問し、研究および学生・教職員の交流を含む学術連携について協議。