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The Hitachi Global Foundation, Asia Innovation Award 2022年度(第3回)受賞者

日立財団アジアイノベーションアワードは、ASEANの社会課題解決と持続可能な社会実現に資する科学技術イノベーションを促進するために、2020年度より開始した表彰事業です。
本アワードでは、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目的として、あるべき社会像を描き、科学技術の社会実装を計画に入れた優れた研究および研究開発において、画期的な成果をあげ、明らかに公益に供したと思われる個人またはグループを表彰します。

2022年度は、ASEAN6カ国(カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、ベトナム)の23大学を対象に、SDGsのゴール6「安全な水とトイレを世界中に」とゴール11「住み続けられるまちづくりを」のそれぞれ以下のターゲットに貢献する研究および研究開発の成果を募集しました。

ゴール6「安全な水とトイレを世界中に」
ターゲット
  • 6.1 安全で安価な飲料水へのアクセス
  • 6.2 下水・衛生施設へのアクセス
  • 6.3 汚染の減少、有害な化学物・物質の放出の最小化
  • 6.4 全セクターにおいて水利用の効率改善、淡水の持続、可能な採取及び供給
  • 6.5 統合水資源管理
  • 6.6 水生態系の保護・回復

ゴール11「住み続けられるまちづくりを」
ターゲット
  • 11.1 スラムの改善
  • 11.3 包摂的かつ持続可能な都市化
  • 11.5 災害による被害と経済損失の削減
  • 11.6 大気汚染と廃棄物処理
  • 11.7 緑地と公共スペースへのアクセス
  • 11.b 災害リスク管理の策定と実施

対象大学から推薦による応募を受け付け、書類審査、面接(最優秀賞候補者のみ遠隔で実施)、選考委員会を経て、16名の受賞者が選定されました。

選考委員長講評

日立財団アジアイノベーションアワードの選考経過について報告いたします。

日立財団アジアイノベーションアワードはASEANの社会課題解決と持続可能な社会実現に資する科学技術イノベーションを促進するために2020年度から開始した表彰事業です。本アワードでは、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目的として、あるべき社会像を描き、科学技術の社会実装を計画に入れた優れた研究および研究開発において、画期的な成果をあげ、明らかに公益に供したと思われる個人またはグループを表彰しています。国連が掲げるSDGsの17のゴールと169のターゲットのうち、毎年2つのゴールといくつかのターゲットを選定し、これらに貢献する研究および研究開発の成果を募集し、自国やASEANのあるべき社会像を描いた、成果の社会実装計画をASEANの研究機関から提出いただいています。

2022年度は、ASEAN6か国(カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、ベトナム)の23の大学を対象に、SDGsのゴール6「安全な水とトイレを世界中に」とゴール11「住み続けられるまちづくりを」のそれぞれ選定されたターゲットに貢献する研究および研究開発の成果を募集しました。

3年目となる今年も、依然、国によるレベルの差はあるものの、全体的に質の高い応募が増え、本アワードが少しずつ社会に認められてきていることを感じています。 最優秀賞を受賞した2件は、共通して水処理の問題解決をめざした研究成果となっており、技術力の高さに加え、社会実装の可能性が高く評価されました。また、その他の受賞案件も、その地域に根ざした方法で、問題を解決していこうとする意気込みを強く感じました。

2022年9月から10月に開催された選考委員会では、申請書や学術論文などの添付資料、オンライン面接を総合して評価することに加え、研究開発力の差も考慮して、厳正な審査を行いました。最終的に、合計16件の研究、および研究開発の成果(最優秀賞2件、優秀賞4件、奨励賞10件)を選定し、理事長の承認を得て、合計金額15,000,000円の表彰を決定いたしました。

本表彰が研究成果の社会実装を通じて、受賞者の研究活動の広がりに貢献する事を、選考委員一同祈念しております。

最優秀賞

Phung Thi Kim Le

ターゲット6.3

農業廃棄物由来の水処理用バイオベースエアロゲル

Phung Thi Kim Le

ホーチミン市工科大学
Associate Professor, Director, Refinery and Petrochemical Technology Research Centre

ベトナム国旗:ベトナム

最優秀賞受賞者の研究概要を動画でご紹介します。

研究テーマ

水処理のための農業廃棄物由来の先進的なバイオベースエアロゲル

社会課題

油や染料による水質汚染は、現在、水生生物と陸生生物の生態系を破壊し、海岸の砂や周辺の水を汚染しています。また、農業廃棄物は、現場での焼却または埋め立てによって不適切に処理されるため、温室効果ガス、粒子状物質、多環芳香族炭化水素の放出など、深刻な環境問題にもつながります。農業廃棄物を水質汚染管理のための高性能製品にリサイクルすることは非常に重要です。

研究および研究開発の成果

私たちは農業廃棄物由来のエアロゲルを製造する環境に優しい技術とプロセスの開発に成功しました。私たちが開発した手順は、ポリビニルアルコールやキサンタンガムなど環境に優しく手頃な価格の架橋剤を利用することにより、従来のゾル・ゲル法と比較して合成時間を2分の1に短縮し、有毒で高価な化学物質の使用を制限します。
パイナップルの葉およびキトサンから得られるエアロゲルは、超軽量かつ超多孔質(多孔度99.36%)であり、メチル・オレンジとメチレン・ブルー(MB)に対してそれぞれ136.64mg/gと31.56mg/gの高い吸着容量を持っています。パイナップルの葉および落綿由来のエアロゲル複合材料も、MBで34.01mg/g、油で15.8g/gという高い吸着容量を示します。軽量のココナッツファイバー由来のエアロゲルは、クリスタル・バイオレットと油の両方をそれぞれ約47 mg/gおよび20g/gの吸着容量で吸着できます。
2019年から2022年にかけて、水処理のためのセルロースベースの農業廃棄物由来のバイオベースのエアロゲルに関連する14の論文を発表し、2件の国内の特許を出願しました。

社会実装計画

研究中に私たちはエアロゲルの大量生産に関心のある産業界の協力者(DPNエアロゲル株式会社、ベトナム・フード株式会社)や地元の企業と話し合いを行いました。DPNエアロゲル株式会社は現在、開発された手順を適用し、100,000m2の生産能力を持つ工場の建設を進めています。私たちは同社と共同で、量産活動、生産ラインの完成、工場の操作トレーニングを通じて、産業規模のエアロゲル生産を進めています。
完成品は、実際の効果を評価するために、地元の工場の廃水処理システム、運河、河川敷に直接適用できます。そのため、地元の繊維工場(Det May 7株式会社)の廃水処理システムおよび河川や運河沿いの油処理施設でこれらのエアロゲルの効率をテストすることを計画しています。また、バイオベースのエアロゲルの特徴、技術、用途、農業廃棄物の価値を紹介するためのトレーニング・セッションやワークショップを開催しています。

SDGsへの貢献

私たちの研究開発活動は、廃棄物の価値に対する人々の意識を高め、環境問題を解決するために地域の廃棄物をリサイクルするという概念を人々が受け入れることを助け、収穫後に作物の茎や葉を燃やすという行動を減らす効果があります。私たちの農業廃棄物由来のバイオベースのエアロゲルは、汚染物質に対するより優れた選択性と、水処理における非常に高い吸着能力を示します。開発された技術は、グリーンケミストリーの基準も満たし、社会の持続可能な開発の方向性に沿っています。

活動の様子


農業廃棄物および産業廃棄物由来のエアロゲルの研究グループ

シンガポール国立大学のHai Minh Duong准教授と特別セミナー「工学的応用のための様々な廃棄物からの高価値エアロゲル」を開催(上)。マレーシアで開催された第6回大学院環境研究コロキウム2022での研究開発活動についての報告の様子(下)。


パイナップルの葉とキトサンから作られたエアロゲルによる色素除去:(a)メチル・オレンジ、(b)メチレン・ブルー

受賞コメント

気候変動と環境は、技術開発において常に注意が必要な問題です。農業廃棄物を高性能エアロゲルに変換して水質汚染を管理する私たちの技術は、持続可能なソリューションです。この技術を世界に広める機会を与えてくださった日立財団に心から感謝します。

最優秀賞

Sri Juari Santosa

ターゲット6.3

ハイブリット材料ベースの吸着剤の開発と導入による安全な水源の提供

Sri Juari Santosa

ガジャマダ大学
Professor, Chemistry Department, Faculty of Mathematics and Natural Sciences

インドネシア国旗:インドネシア

最優秀賞受賞者の研究概要を動画でご紹介します。

研究テーマ

適応可能で再利用可能なハイブリッド材料ベースの除去方法の開発と導入による飲料用および家庭用の安全な水源の提供

社会課題

インドネシアは溶存有機化合物(DOCs)を除去するための凝集剤としてミョウバンを使用し、安全な飲料水の提供に長い間苦労してきました。したがって、ミョウバンを使用した凝集に代わるアプローチの開発が急務です。 また、インドネシアは一般的に環境に直接排出される繊維産業の廃水による環境汚染の長期的な問題を抱えています。したがって、環境に放出する前に廃水を処理する努力は非常に重要です。

研究および研究開発の成果

これらの課題に対し、私たちは飲料水処理の原水中のDOCsを効果的に除去する吸着剤として、マグネタイトとハイドロタルサイトのハイブリッド材料(Mag-HT)を合成・開発しました。合成された材料はミョウバンよりもはるかに効果的でした。使用済みの材料は、吸着されたDOCsを溶出することによって再生され、農業目的に適した環境に優しい液体肥料を生成することが可能です。
繊維産業の排水処理にハイドロタルサイトを適用したケースでは、この材料が他の一般的に使用される吸着剤よりもはるかに強力であることを示す結果が得られました。使用済みの材料は焼成するだけで再生し、再利用することができます。興味深いことに、材料の吸着容量は焼成後に増加しました。

社会実装計画

合成された材料は、西カリマンタン州ポンティアナック市の飲料水処理事業者の実際の原水からDOCsを除去するために、また、東ジャワ州のマジュ・マパン繊維工業の廃水を模倣した合成廃水中の染料を除去するために適用されました。 今後は以下の行動計画を実施します。

  1. 飲料水処理事業者によって実際に使用されているプロセスに合成材料を導入
  2. 植物栽培を実践する個人や地域社会への環境に優しい肥料の生産と利用に関する知識の伝達
  3. 合成材料による排水処理のための繊維産業との協働

さらに、ベトナムにはインドネシアと同様の問題があるため、ベトナム国家大学ホーチミン市校のベトナム人科学者に私たちの知識を伝え、インドネシアのガジャマダ大学でベトナム人科学者の研修を行いました。

SDGsへの貢献

飲料水や産業排水の適切な管理と併せて私たちの研究開発を実施することで、安全な水資源の持続可能性を確保することができます。それは水質の改善(6.3)につながり、それによって生態系の維持(2.4)、死亡件数の減少(3.9)、開発の促進(17.7)、やがては経済成長の持続(8.1)、貧困の根絶(1.1)というSDGsのターゲットに貢献することができます。

活動の様子


溶存有機化合物(DOCs)除去試験用の原水のサンプルの採取


植物栽培を実践するコミュニティへの環境に優しい肥料の生産と利用に関する知識の伝達


飲料水処理事業者の原水からの溶存有機化合物(DOCs)除去における合成マグネタイト・ハイドロタルサイト(Mag-HT)の優位性が実証試験の結果によって示されました。

受賞コメント

チームを代表し、アジアイノベーションアワードの最優秀賞を授与してくださった日立財団に心から感謝の意を表したいと思います。私たちの活動は、インドネシアの政府機関や民間機関、ベトナム国家大学ホーチミン市校、ドイツの開発協力エクセレンス・センターなど、さまざまな団体からの支援により成功しました。

優秀賞

Cindy Rianti Priadi

ターゲット11.3 11.6

食品廃棄物からバイオガスと液体肥料を回収するトルビ(Toren Biogas、Torbi)の開発

Cindy Rianti Priadi

インドネシア大学
Assistant Professor, Lecturer, Department of Civil and Environmental Engineering, Faculty of Engineering

インドネシア国旗:インドネシア

研究テーマ

トルビ(Toren Biogas、Torbi)による利用者指向の食品廃棄物の発生源での栄養素とエネルギーの回収

社会課題

インドネシア人はそれぞれ年間約300キログラムの食品廃棄物を出し、これは都市の廃棄物のほぼ半分を占めています。食品廃棄物は病気や悪臭、インドネシアの地球温暖化ガス排出量の8%を占めるメタンガスの原因となります。したがって、埋め立て地に送られる食品廃棄物の流れを変えると同時に、その栄養素とエネルギーを回収することは非常に重要です。

研究および研究開発の成果

トルビは、食品廃棄物をバイオガスと液体肥料に変換する費用対効果の高い低密度ポリエチレン(LLDPE)反応器で、その価格は、現在インドネシア市場で入手可能な類似の反応器の約半分です。トルビの設置面積は1平方メートル未満で、1日あたり最大3キログラムの有機廃棄物を処理できます。パッシブミキシングと安全なバイオガス貯蔵を促進するように設計されています。家庭やコミュニティは、有機廃棄物を処理し、6キログラムのLPGに相当するバイオガスと、月あたり50リットルの土壌の養分に必要な液体肥料を得ることができます。それによって食品廃棄物管理や臭気の負担を軽減し、ひいては健康への影響を軽減します。

社会実装計画

トルビは、私有地(ボゴールおよびバンドン)、被災地、トルビが必要とされているコミュニティ(バンテン、カラワン、ロンボクにおけるインドネシア大学の「UIケア」プロジェクト)など、すでに多くの場所に設置されています。トルビはまた、国連教育科学文化機関(UNESCO)によって生物圏保護区に指定されているワカトビの海洋漁業コミュニティ・アカデミー(AKKP)にも設置されています。トルビはただの「モノ」ではなく、地域社会の関与を実現する要素でもあります。トルビが設置される時、責任ある廃棄物管理に関するトレーニングも学生や家庭、地域社会に対して実施されます。

SDGsへの貢献

トルビは発生源に近い有機廃棄物処理を支援し(SDGs ターゲット12.4「廃棄物の管理」)、家庭で使用することにより(7.1「安価なエネルギー」および7.2「再生可能エネルギー」)メタン排出量を削減し(13.3「気候変動の緩和」)、自治体の食品廃棄物の負担を軽減します(11.3「持続可能な都市化」)。

活動の様子


災害対応としてのトルビの設置


国連教育科学文化機関(UNESCO)によって生物圏保護区に指定されているワカトビの海洋漁業コミュニティ・アカデミーでのトルビ利用者のトレーニング

受賞コメント

私たちはこの賞を受賞できたことを非常に光栄に思っており、これが政府、学界、ビジネス界、コミュニティ、メディアの5つの要素を含む「ペンタヘリックス・モデル」のコラボレーションを通じて、特にアジア地域でのトルビのより広範な普及を支援する力になることを期待しています。積極的な研究、需要の創出、地域社会の関与を通じて、理想的な責任ある廃棄物管理を共に実現することができると考えています。

優秀賞

Delik Hudalah

ターゲット11.3

政府と産業界の協力による包摂的で持続可能な都市周辺地域の構築

Delik Hudalah

バンドン工科大学
Professor, School of Architecture, Planning and Policy Development

インドネシア国旗:インドネシア

研究テーマ

政府と産業界の協力による包摂的で持続可能な都市周辺地域の構築

社会課題

ジャカルタ大都市圏周辺のほとんどの地方自治体は発展が遅れ、財源や人的資源、組織的能力が不足し、交通渋滞、大気汚染、水質汚染、住宅不足、社会の崩壊など、急速かつ大規模な都市化現象に伴う差し迫った問題に対処できていません。

研究および研究開発の成果

私たちは7つの工業団地の管理者、政府、国有企業の間の協力を支援し、ジャカルタ周辺にある国内最大の工業団地の集合体のインフラストラクチャの断片化と分断による競争力の低下という問題に取り組みました。その結果、協力を成功させるための重要な戦略には、以下が含まれることが明らかになりました。
— より良い協調を促進するための参加者間の非公式および個人間のコミュニケーションの構築
— 情報交換、コラボレーションの始動、社会的統制のための主要な手段としてのテーマ別フォーラムの開催
— 法的拘束力のない行動計画を作成するためのコンセンサス指向の意思決定プロセスの設計

社会実装計画

私たちは、州政府がこの協力関係のリーダーとなることを推進しました。そして、州政府に対し、国営企業や官民パートナーシップを通じて、その組織的能力および財政的能力を構築するよう奨励しました。この新たに構築された能力により、政府は地域のビジョンを構築し、協力の持続可能性を維持するための基礎として主要な資源の流れを管理する上で中心的な役割を果たすことができました。私たちは州政府および産業管理者協会と協力し、地方政府、中央政府、開発者、投資家、学者、計画者との会議、セミナー、フォーラム、ネットワーキング・セッションを開催しました。

SDGsへの貢献

この連携により、工業団地の管理者間でインフラ整備を分担することが可能になり、それにより、社会的、経済的な負担や物流にかかるコストを削減できます。さらに、隣接する工業団地のプロジェクトを相互にリンクし、連携することにより、地域のインフラストラクチャ全体のアクセシビリティを改善し、国および地域のインフラストラクチャが直面する交通負荷を軽減できます。

活動の様子


西ジャワ州の知事や高官と共同でフォーカスグループ・ディスカッションを主催し、西ジャワ州の工業団地開発のガバナンス・モデルについて話し合いました。(2021年)


官民連携で構築された道路網(2015年)

受賞コメント

政府のリーダーシップと産業界の協力は、急速に成長する大都市において持続可能で包摂的なコミュニティを実現するための重要な革新的戦略です。

優秀賞

Teuku Faisal Fathani

ターゲット11.5 11.b

地域社会に根差したマルチハザード早期警報システムの開発

Teuku Faisal Fathani

ガジャマダ大学
Professor, Department of Civil and Environmental Engineering

インドネシア国旗:インドネシア

研究テーマ

地域社会に根差した、低コストで適応性の高いマルチハザード早期警報システムの開発

社会課題

インドネシアでは、その地質的特性ゆえに、地震、津波、土砂崩れ、洪水などの災害が多発します。人口が多く、特に社会的観点から災害管理の障害となっています。そのため、社会的配慮を取り入れたマルチハザード早期警報システムを開発し、その導入が確実に効力を発揮できるようにする必要があります。

研究および研究開発の成果

技術的・社会的な分野横断型アプローチを採用した、地域社会に根差した早期警報システム(EWS)を開発しました。様々な被災地域で適切かつ効果的に機能するよう、シンプルな作りで、適応性に優れています。システムの導入には地方政府(地方防災庁)と地域社会が参加し、減災について学び、その能力を向上させて、インドネシアの自然災害への対応力を強化し、災害リスクを緩和できます。

社会実装計画

ガジャマダ大学(UGM)とインドネシア国家防災庁(The Indonesian Authority for Disaster Management )は長年にわたり、災害管理で協力してきました。私たちはまた、減災と技術革新に重点を置く研究所であるGAMA-InaTEKも設立しました。様々な災害管理所管庁、大学、民間部門と協力し、インドネシアの33の郡と130の都市/地区にEWSを導入し、被災地域の災害管理能力を向上・強化してきました。本システムはミャンマーなどの海外諸国でも導入されています。インドネシア基準SNIとISOを定め、災害リスクの軽減措置を政策、規制、計画立案に組み込んできました。

SDGsへの貢献

地域社会のニーズを満たすためにマルチハザードEWSの開発を継続します(SDGs目標9)。EWSの導入により、気候関連などの災害から立ち直る地域社会と政府のレジリエンスが強化されます。インドネシア基準SNIとISOにより、災害管理が確実に政策立案に組み込まれることになります(SDGs目標11および13)。

活動の様子


2020年に中部ジャワ州スマランで実施された土砂崩れの避難訓練


土砂崩れ早期警報システムの概略図

受賞コメント

地域社会に根差したマルチハザードEWSは、地域社会と政府が参加して災害リスクを低減する、低コストでシンプルな方法です。インドネシア、その他の国々でEWSを採用する地域が増え、災害、特に気候変動関連の災害から立ち直る地域社会のレジリエンスが向上することが期待されます。

優秀賞

Thanh Xuan Bui

ターゲット6.3

生活廃水処理と持続可能な都市の実現に向けた湿地型屋上(WR)システム

Thanh Xuan Bui

ホーチミン市工科大学
Associate Professor, VNUHCM Key laboratory of Advanced Waste Treatment Technology

ベトナム国旗:ベトナム

研究テーマ

生活廃水処理と持続可能な都市の実現に向けた湿地型屋上(WR)システム

社会課題

ベトナムなど途上国の都市では、未処理のまま水域に放出される生活廃水が90%に及ぶこともあり、運河や湖、河川の深刻な汚染の原因となっています。一方、建物や住宅の屋根はほとんどがコンクリート製で、都市の温暖化を促し、環境破壊につながっています。

研究および研究開発の成果

地元の植物と超薄型ろ床を用いた、環境に優しい薄層型湿地汚水処理システムである湿地型屋上(WR)システムを開発しました。WRは環境の質の向上や、生活廃水の処理など、典型的な都市問題の解決に寄与し、温熱環境を改善(ヒートアイランド現象の緩和)して大気汚染を減少させ、都市の緑化と生物多様性を促進します。WRシステムは米国で特許を取得しています。これまでに権威ある専門誌で5本の研究論文を発表しています。

社会実装計画

WRで処理した後の生活廃水は、国の排出基準および水再利用基準を満たしています。WRシステムにより、緑化率が高まります(湿地1m2につき99m2の緑地面積)。湿地型屋上は、都市の建物や家庭からの生活廃水を完全に処理する、環境に優しい工学的ソリューションであることを確認しています。

SDGsへの貢献

革新的なWRは、いくつかのSDGs分野に貢献できる可能性があります。自然を用いた新しいソリューションにより汚染の拡散を防ぐために、科学技術を通じた持続可能性を目指すという原則が推進されます。主な分野は「安全な水とトイレを世界中に」(SDG 6)と「住み続けられるまちづくりを」(SDG 11)です。

活動の様子


湿地型屋上システム(WR)の略図


湿地型屋上システムの利点

受賞コメント

2022年度日立財団アジアイノベーションアワードに心から感謝します。この賞が今後も発展し、他の研究者たちを評価してくれると確信しています。

奨励賞

Chim Chay

ターゲット11.6

カシューアップルを用いた高付加価値ビネガー製品の開発

Chim Chay

王立農業大学
Vice Dean, Faculty of Agro-Industry

カンボジア国旗:カンボジア

研究テーマ

農産物加工・包装技術を用いた高付加価値農産物のイノベーション:ビネガー製品についてのケーススタディ

研究概要

「農産物加工・包装技術を用いた高付加価値農産物のイノベーション:ビネガー製品についてのケーススタディ」をテーマとする本研究の目的は、付加価値製品、特にカシューアップルを原料とするビネガーの生産に活用できる可能性のある加工技術の開発です。カンボジアの食品加工業者の状況に適した製品イノベーション・包装技術を開発します。この加工モデルは、想定されるカシューアップル製品の食品加工管理の指針として使うことができます。種子を取り除いたカシューアップルを使って付加価値のある製品を生産すれば、環境廃棄物の削減や、地元農家や食品加工業者の収入増につながります。農産物加工・包装技術を用いた革新的な高付加価値農産物の概念を以下に示します。

奨励賞

Emmanuel Diza Delocado

ターゲット6.6

種の発見、保全、水産資源管理のための淡水生物多様性調査

Emmanuel Diza Delocado

アテネオ・デ・マニラ大学
Assistant Professor, Department of Biology, Lab Head, Ateneo Biodiversity Research Laboratory

フィリピン国旗:フィリピン

研究テーマ

種の発見、保全、水産資源管理のための淡水生物多様性調査

研究概要

人間の活動に起因する内陸淡水生態系の大幅な悪化は、河川流域の生物多様性及び水の安全、文明発祥の地、人類の生命線を危険にさらします。河川のこうした質の低下は見過ごされがちな生物を脅かしますが、その一例である昆虫は不可欠な生態系サービスを提供し、生物指標になり得る存在です。このため今回の研究開発プロジェクトは、フィリピン諸島全域で昆虫の種を発見し、生物多様性インベントリを更新することを目的としています。従来の顕微鏡検査とDNAを用いた現代的手法を組み合わせた統合的な分類枠組みを活用することで、過去数年で少なくとも150の種がアテネオ生物多様性研究所によって記載されました。本プロジェクトの過程で、様々な地方自治体の部門や地域社会が、各地域でそれまでは記載がなかった豊かな生物多様性への意識を高めました。今回の取り組みは、水産資源管理向上への地域コミュニティの参加(SDG目標6.b)の可能性を引き出すことで、SDGの目標6.6(水に関連する生態系の保護・回復)に貢献しています。

奨励賞

Maria Aileen Leah Guerrero Guzman

ターゲット6.1 6.4 6.5

フィリピン地下水アウトルック(PhiGO)プロジェクト

Maria Aileen Leah Guerrero Guzman

アテネオ・デ・マニラ大学
Associate Professor, Department Chairperson, Department of Environmental Science, School of Science and Engineering

フィリピン国旗:フィリピン

研究テーマ

フィリピン地下水アウトルック(PhiGO)プロジェクト

研究概要

フィリピンでは、2030年までにすべての人が安全で妥当な料金の飲料水を誰でも平等に利用できるようにすることが求められています。政府はその重要性を認識して、地下水を保全・回復することを目指しています。
PhiGOプロジェクトは以下を実現しました。

  1. 地下水の水位と質をリアルタイムで監視するためのセンサーの開発、設置、保守
  2. リアルタイムデータ、地域の地下水動態の高度なモデル、地下水の季節的・長期予測に基づいて、政府が国家水資源委員会(NWRB)を通じて行う決定
  3. 地下水管理のための改良されたウェブサイトを通じたデータの共有

当プロジェクトは、フィリピンにおける水文気象学的ハザードの影響を理解するためのフィリピン・英国ニュートンAgham(科学)科学技術協力プログラムの下で、英国地質調査所(BGS)とアテネオ・デ・マニラ大学(ADMU)が主導する3年にわたる連携プロジェクトです。
パンパンガとイロイロにある水問題が深刻な都市が調査対象地となりました。調査結果を水問題のある他の都市や主要な観光地でも再現する予定です。

奨励賞

Rimawan Pradiptyo

ターゲット11.3 11.5 11.b

SONJO: パンデミック下のジョグジャカルタにおけるオンライン型社会資本を用いた人道支援

Rimawan Pradiptyo

ガジャマダ大学
PhD, Department of Economics, Faculty of Economics and Business

インドネシア国旗:インドネシア

研究テーマ

SONJO: ジョグジャカルタにおける新型コロナウイルス(COVID-19)の悪影響の最小化を目的とするオンライン型社会資本

研究概要

COVID-19のパンデミック期間中、新型コロナ感染者数の急増により経済・保健部門には前例のないほどの負担がかかりました。SONJOは、ジョグジャカルタにおいてパンデミックの影響を最小にとどめるためにWhatsAppアプリ・グループ(WAGs)を活用して保健分野14プログラム、経済分野8プログラムを調整・提供するオンライン型社会資本です。SONJOは誠実さ・透明性・共感・相乗効果を推進することで非金銭的資源を結集して成果を生み出すため、利用にあたって資金は必要ありません。2020年3月24日から約2,300人のメンバーが30の WAGグループに分散して稼働しており、その中にはSONJOと他の5つの州にある地域社会/企業との6つの共同WAGが存在します。SONJOの成果には以下が含まれます。
a) 352社の中小企業がSONJOのショーケースアプリに参加
b) SONJOは3つの州において隔離シェルター51カ所の開発を促進
c) SONJOのクラウドファンディングによる大規模ワクチン接種において221,829回の接種を実施
SONJOはSDGs 目標3、11、16、17を促進しています。

奨励賞

Riri Fitri Sari

ターゲット11.3 11.6

包括的で持続可能な都市化のためのブロックチェーンを利用したビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)管理技術

Riri Fitri Sari

インドネシア大学
Professor, Department of Electrical Engineering, Faculty of Engineering

インドネシア国旗:インドネシア

研究テーマ

インドネシア大学(UI)グリーンシティ・メトリック・イニシアチブに基づく包摂的で持続可能な都市化のためのブロックチェーンを利用した持続可能なビルディング・インフォメーション・モデリング管理技術

研究概要

世界は水、エネルギー、気候変動、汚染、人口の変化、高齢化、パンデミックと公衆衛生問題、不平等と貧困、ガバナンス、自然災害、教育をはじめとする多くの課題に直面しています。こうした課題への対応において、市区自治体は果たすべき非常に重要な役割を担っていると考えます。われわれはUIグリーンシティ・メトリック指数の新しい計算方法を使ったオンライン質問票を考案しました。持続可能な開発目標(SDGs)の認識を促すために、われわれはインドネシア各都市のすべての自治体に参加を呼びかけました。UIグリーンシティ・メトリックは、持続可能な都市づくりへの意識向上に向けてインドネシアの都市・地域社会の状況を前進させることを目指しています。こうした取り組みを、持続可能性を推進する多くのリーダーと連携し、持続可能性の課題に向けた解決策を認識しながら進めています。持続可能性指標を促進するためのテーマ別の優先的取り組みの一環として、ブロックチェーンを利用したビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)に関連する研究開発の知見が、持続可能な都市・地域社会をつくる革新的アプローチの一つとして発表されました。

奨励賞

Robert Alejandro Nepomuceno

ターゲット6.3

「作物が必要とする窒素および亜鉛肥料の量を50%削減するOryzinc®バイオイノキュラント」

Robert Alejandro Nepomuceno

フィリピン大学ロスバニオス校
Researcher, National Institute of Molecular Biology and Biotechnology

フィリピン国旗:フィリピン

研究テーマ

作物が必要とする窒素および亜鉛肥料の量を50%削減するOryzinc®バイオイノキュラント

研究概要

従来型の農業は、収穫量を最大化するため化学肥料に過度に依存しています。残念なことに、過剰な肥料と重金属土壌改良材の使用により、硝酸エステルと金属が地下水に浸透し、気づかないうちに水が汚染されます。Oryzincは、土壌に既に存在する不可給態の亜鉛を活用し、窒素固定で取り出した大気中の窒素を利用することで、肥料の使用を最小限に抑える技術です。これが可能なのは、窒素固定と亜鉛可溶化を担うことができる多特性の微生物がOryzincに含まれているからです。Oryzincの生産は非常に安価で、農家の収入増に寄与します。加えて、化学肥料の使用量が減少し、自然の微小植物や動物、特に有用な土壌微生物の保全、管理、復元につながります。間接的には、有用な土壌微生物の拡散が、土壌介在病原菌を抑制し、殺虫剤や防カビ剤の使用が減少します。最後に、輸入農薬への依存度が低減すれば、突発的な地政学的事象による影響を受けにくくなり、フィリピン経済にとって有益です。

奨励賞

Sounthisack Phommachanh

ターゲット6.3 6.4 6.6

養豚場向けバイオガス発生・精製・供給システムを備えた廃水処理システムとバイオ肥料の製造・流通網の確立

Sounthisack Phommachanh

ラオス国立大学
Dr., Department of Mechanical Engineering, Faculty of Engineering

ラオス国旗:ラオス

研究テーマ

養豚場に設置され、効果的に稼働する、バイオガス発生・精製・供給システムを備えた廃水処理システムと、バイオ肥料の製造・流通網の確立

研究概要

ラオス人民民主共和国では、畜産、特に養豚業が最も急速に成長する産業の1つです。養豚農家が排出する未処理の廃棄物は、臭いやハエの発生、水質汚染などの問題の原因となり、環境に深刻な危害を加えています。 こうした問題を解決する手段として、有機廃棄物の嫌気性消化処理が考えられます。畜産農場のバイオガスシステムはバイオガス技術に基づいており、廃水に含まれる有機物質をいわゆる嫌気性細菌が消化(無酸素酸素消化)し、およそ65:35の比率でメタンガス(CH4)と二酸化炭素(CO2)に変換します。この気体混合物は可燃性で、熱利用や機械の動力源に利用可能な質の高いエネルギー源となり得ます。加えて、嫌気性消化プロセスにより、COD(化学的酸素要求量)とBOD(生化学的酸素要求量)で測定した廃水に含まれる有機化合物の量を最大70-90%削減できます。
本プロジェクトの地域社会に対する社会的意味合いは、次の通りです。
— 周辺の農村の大気質が大幅に向上します(汚染を80%削減)。
— 周辺の水田の水質・土壌汚染を完全に除去します。
— バイオガスを無料で使用できます(利用を希望する家庭にバイオガスの配管を接続します)。
— 養豚場が環境に悪影響を及ぼすことに起因する、地元住民と農家との緊張関係が緩和されます。
— 一定量のGHGの排出を防ぎます(年間約43トンのメタンガス、約900トンのCO2に相当)。
本プロジェクトの研究開発は、特にSDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」と目標11「住み続けられる街づくりを」に寄与します。

奨励賞

Tjandra Setiadi

ターゲット6.3 6.6

嫌気性・好気性を組み合わせた繊維産業廃水処理プロセスの開発

Tjandra Setiadi

バンドン工科大学
Professor, Department of Chemical Engineering, Faculty of Industrial Technology

インドネシア国旗:インドネシア

研究テーマ

環境に優しい化学をサポートする、嫌気性・好気性を組み合わせた繊維産業廃水処理プロセス

研究概要

水は地球上の生命と人類の発展に欠かせない資源です。繊維産業は重要な世界経済の一部門です。繊維産業が排出する廃液、特に染料は、極めて毒性の高い汚染物質で、健康や社会・環境の保全に悪影響を及ぼします。現在用いられている従来の処理技術は、資金、運用、エネルギー、保守要件などいくつかの点で不備があります。私たちは新しい嫌気性膜分離法、すなわち下向流懸垂型スポンジシステムを他の反応器構成と連動させて、有毒染料を含む高張力の繊維染色廃液を処理する方法を開発し、質の高い処理水の生成に成功しました。
本技術は、持続可能な開発の重要な3つの柱、すなわち社会、環境、経済の全てにとって大きな意味があります。特にSDGターゲットの3.9、4、6.3、6.6、7.b、11.3、15.1に重点を置き、環境、保健、技術、教育に関連するSDGsに寄与します。本システムを産業廃水の管理に活用して、社会や地域社会の福祉に貢献し、環境に優しい化学をサポートすることができます。

奨励賞

Tuan Anh Vu

ターゲット6.2 6.4 6.6

廃水浄化技術に用いる金属酸化物複合材料の開発

Tuan Anh Vu

ハノイ工科大学
Associate Professor, Department of Analytical Chemistry, School of Chemical Engineering

ベトナム国旗:ベトナム

研究テーマ

廃水処理に使用する金属酸化物(Fe2O3, TiO2, ZnO)複合材料の開発を通じた、促進酸化処理(AOP)の効率性向上

研究概要

水は生活に欠かせない要素ですが、染料、薬品、殺虫剤などの廃液を含む、様々な汚染物質により深刻な汚染が徐々に進んでおり、毒性が高く、生分解不可能な廃水による環境破壊や生態系への脅威が生じています。アジアのほとんどの都市には有効な廃水処理システムがありません。水を浄化し、住民の衛生を守るには、有効で経済的な廃水処理法の選択が必要です。
本研究は、廃水浄化技術に用いる金属酸化物複合材料の開発です。廃水に含まれる有毒有機物質の処理の効率性に対する反応パラメータの影響を研究し、形状、物質構造、最適な反応条件を調整してAOPの効率性を向上させ、物質の形状の制御で一定の成果を上げました。
金属酸化物の触媒(Fe2O3, ZnO, and TiO2)によるAOPを用いた水処理システムは、太陽光を利用でき、リユースが可能なため、非常に効率的かつ省エネ・低コストなシステムであり、ベトナムでの製造と環境保護が大きく変わることが見込まれます。
本研究の成功は、(1) 製造コストの削減と(2) 水資源、生態系、人の健康の保護と人間の寿命の延長に寄与します。
私たちの研究開発は、特にSDG目標6「安全な水とトイレを世界中に」のターゲット6.2、6.4、6.6の達成に貢献します。

奨励賞

Yen Thi Thai Doan

ターゲット11.6 11.7

Aloxy—藻を用いた持続可能な照明システム

Yen Thi Thai Doan

ハノイ工科大学
Associate Professor, School of Environmental Science and Technology

ベトナム国旗:ベトナム

研究テーマ

Aloxy—屋内の空気浄化、新鮮な酸素の生成、環境に配慮した屋内空間の装飾を同時に実現する、藻を用いた持続可能なシステム

研究概要

屋内の空気の質は非常に重要な問題であり、大きな懸念が生じています。CO2濃度と微粒子物質レベルが高まり、屋内の空気の質が悪化したことで、職員は集中力の欠如や頭痛に悩まされており、長時間そうした空気にさらされることで直接健康被害が及んでいます。 私たちが開発した、藻を使った画期的な照明システムAloxyは、CO2を吸収し、新鮮な酸素を生成して屋内の空気の質を向上させると同時に、環境に配慮した屋内空間の装飾を実現できます。配置最適化を行い、様々な管材料の耐久性、硬度、強度を検証し、藻の種類、光度、空気の流量など、CO2吸収率に影響を及ぼすパラメータを調査しました。最終的に、エアリフト式曝気装置付きの管と、管の中央に光源を設けるのが最適だということがわかりました。最も革新的な特徴は、藻の細胞に均一に照射しながら、省エネ効果もあるLEDのタイプを見つけたことです。研究段階のプロトタイプから、藻を使った市場性のあるシステムへの改良作業は継続中であり、完成が期待されています。本研究は、屋内の空気の質の向上、CO2排出量の削減、環境に配慮した生活空間の創造に貢献しうるものであり、これら全てがSDGs、特に目標の11.6(大気質と廃棄物管理への配慮)および11.7(緑地と公共スペースへのアクセス)の達成に寄与します。

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