シンポジウム・ダイジェスト
現代の日本は、全人口に占める65歳以上の人口が27・3%を占め、高齢化を通り越し「超高齢社会」となっています。今後も日本の高齢化率は上昇すると見られ、高齢者の問題は誰もが避けて通れない最大の社会課題の一つと言えます。深刻であるが故に暗くなりがちなテーマですが、このたびのシンポジウムは、逆に笑いを交え、明るく前向きに課題をとらえる趣向で開催されました。
当日は、日立財団の田中理事長による開会のあいさつに続き、B&Bのメンバーとして一世を風靡した漫才師、島田洋七氏による「洋七・オカンのがばい介護日記」と題した基調講演が行われ、会場は爆笑の渦に巻き込まれました。お笑い界でのさまざまなエピソードや、累計販売部数1000万を超える大ベストセラーとなった著書「佐賀のがばいばあちゃん」に登場する「ばあちゃん」との思い出など、次々に繰り出される抱腹絶倒の内容に大笑いしながらも、その講演には人生の真理や哲学があり、特にご自身の介護への向き合い方には、「元気が出た」「幸福感をもって暮らすコツを学んだ」といった声が聞かれ、多くの観客の共感を生んでいました。島田氏の惹きこまれる講演は、性別や年齢を越えて観客に大きな感動や共感をもたらしてくれました。
そのあとシンポジウムが開催されました。「下流老人」という言葉を生み出した、生活困窮者支援を行うNPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏、本シンポジウムのコーディネーターで、犯罪学の専門家、犯罪予防論の研究を続けられている拓殖大学政経学部教授の守山正氏、認知症の専門家で数多くのご講演や執筆をされている認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子氏、地域の医療・介護職と共有するICTシステムの担当者であり、自身も介護におけるICTの役割を研究中の㈱日立製作所公共システム事業部の川崎英樹氏の4名のパネラーにより講演が行われました。それぞれの講演内容に関しては下記のリンク先をご参照ください。
続くパネルディスカッションでは、先の4名により異なる局面から高齢者を取り巻く課題に切り込みました。多様な視点から高齢化の課題が論じられましたが、共通していたのは「地域コミュニティ」とのつながりの重要性でした。
参加者からは、「将来の日本のために必要な内容だった」「地域と人とのつながりの大切さを学んだ」「高齢者の問題に対する考え方を見直す良い機会となった」「人生を明るく前向きにとらえる気持ちになれた」などの感想がありました。



日立財団は、社会的弱者を取り巻く種々の課題を取り上げ、その解決法や展望、支援策を提示する「社会をみつめるシンポジウム」を今後も開催していきます。
シンポジウム講演内容
講演録1
格差社会における高齢者の貧困~老後破産の実態
格差社会における高齢者の貧困に対し、実際の事例を用いながら、
いかに「下流化」を防いでいくかそのノウハウについて
代表理事 藤田 孝典 氏

代表理事 藤田 孝典 氏
講演録2
高齢者の犯罪における加害と被害
高齢者を取り巻く犯罪問題を「加害」と「被害」の両面から捉え、
講じるべき政策について
日立財団Webマガジン「みらい」編集主幹
拓殖大学政経学部
教授 守山 正 氏

日立財団Webマガジン「みらい」編集主幹
拓殖大学政経学部
教授 守山 正 氏
講演録3
認知症と共に生きる:絶望を希望に変える地域の力
認知症という「絶望」から、
認知症とともにより良く生きていくという「希望」へと
変えていく可能性について動画を交えて
部長 永田 久美子 氏

部長 永田 久美子 氏
講演録4
介護の準備とICT(情報通信技術)の利活用について
介護におけるICT(情報通信技術)の利活用に焦点を当て、
自身の経験を交え、情報が必需品である現代において
「情報弱者」にならないためのコツ
川崎 英樹 氏

川崎 英樹 氏
開催データ

- 開催日
- :2016年12月10日
- 場所
- :拓殖大学 文京キャンパスE館
「後藤新平・新渡戸稲造記念講堂」
(東京都文京区)
- 参加者
- :約140名