
西原さんに質問コーナー
質問1これから高校受験を迎えるうちの子どもとの距離が今ひとつな感じです。
どうしたらいいでしょう?
西原うちの息子のときはやりたいことが見つかったので、じゃそちらに向けて勉強以外のことは全部お母さんが手伝うよと、あと好きな物を食べさせるようにしてました。勉強するときってイライラするので、怒るより「今日何食べたい?」ってやっていたら、何だか受験期にすごく太りました。麺が大好きなので、夜中にバター醤油うどんとかとんでもない物を食わせて。気の毒だったなと思うのは、マンツーマンの塾に行かせていたんですが、朝7時から学校でついていけない勉強した後、塾でまたついていけない勉強で座って9時、10時に帰ってきたらへとへとなんですよ。途中から家庭教師に切り替えたら彼が落ち着いてきて、毎日は疲れて勉強できないと言うのでは、だったら週3日にしようと。最初、そういうことも分からないまま塾に入れて、しかも4日も5日も座らせて勉強させたら子どもがパンクしちゃった。これをできる子はどんどんできるのですが、できない子はどんどんできなくなっていく。先生もできない子の対応は難しかったろうし、私がもともと勉強できないから励ましようがなかったというのもあった。自分の仕事がそうなんですが、よく寝ないと何にもできないんです。だから塾は週2日とか土日だけとか、そうしようよと話し合って減らしました。それで好きな物を食べてよく寝ること。夜更かしして寝ないときには、炭水化物攻撃。肉と炭水化物を食わしておけば、カーッと寝ちゃうので、あとお風呂を沸かしておいてあげるとお風呂が大好きなので長風呂しちゃうので寝ちゃう。そういう「早く寝かせ作戦」をやってましたね。
質問2はたち過ぎの次男が「死にたい」と言い出しました。
西原私は義理の父親が自殺しているんですけど、5歳から19歳まですごく可愛がってくれた養父なんですよ。(自殺するなんて)家族は分かんないです、全然。それって自殺するという病気なんですね。うちのアルコール依存症の夫と一緒で、病気なので絶対に素人判断しないで、まずカウンセラーの所に行ってお母さんがどういう対応を取るかということを習ってください。あとそういう家族を持っている家族会に入る。自分たち健常者の家でも30年間同じネタで喧嘩したりするじゃないですか。だからちょっと心が病気だったりする人はもっと喧嘩する。そこから帰って来た人たちの話は、ものすごく勉強になるんですよ。今だったらインターネットのクリック1個で家族会にもつながります。(そういう所へ)本人が行きたがらないのはしょうがないです、病気なんだから。40度の熱が出ている人と一緒なんです。(病院に)行けと言ったって行けないので、そういうときは周りの人が医学的な知識をきちんと持って対応する。宗教や道徳では絶対に駄目、医学として見る、そうすると対応が早くなる。私、アルコール(依存症の夫)の時にそう言われて、その通りにしました。自分がまず知識を持って、そしてやっと彼が病院に行くと言い始めたんですね。いろんな家族のノウハウを全部聞いて大事なことを聞きました。自殺の場合は鬱とかいろんな専門知識があるでしょうし、まず病院の外来に行ってください。そういうとき、親戚のおばちゃんとかにアドバイスを受けちゃいけません、ろくなこと言わないですから。絶対にまず医学の知識を付けて下さい。
質問3努力をしない高校生の娘に腹が立ちます。娘と距離を取りたいと思うのですが・・・
西原うちの子なんかはかえって応援しすぎてウザイということになっています。ただ私も手が離れて楽だからといって、彼氏とデートする「母ちゃん男作って朝帰り」というケースになってしまいました。これがまた反抗の要因になるかなみたいな(笑)。でも私にも私の人生があるし、かといって結婚したり家の中に連れ込んだりとかしません。あくまで彼氏は外飯(のようなもの)、家の中に連れ込みません。自分の人生に子どもを巻き込むなんていやだし、娘は(反抗期で)放っておいてよ、自分でやるからという時期に来ちゃったので、それはそれでしょうがないなと思って諦めました。何か他の趣味見つけましょうよ。彼氏作ったり、外食を多めにしたり。お母さんというのは小さい頃は愛情の象徴だけど、子どもが大人になったら、かなり重い姑のような匂いがしてくるんじゃないかなと思って、それでやめたということもあるんですよ。大の男が、お母さんがお母さんが、と言われたら何かいやでしょう。母さんの冠はそろそろ子どもたちにとっても重たいかなと思ったんですよ。
小林子育てはステージがありますからね。
西原そう。高校生くらいになるともう友だちくらいかなと。娘とも昔仲が良かったけど今ちょっと距離を置いている友だちみたいな感じですね。つながりは焼肉くらいです(笑)。
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1964年高知県生まれ、武蔵野美術大学卒。1997年『ぼくんち』(小学館)で第43回文春漫画賞受賞。
2002年より毎日新聞日曜朝刊にて『毎日かあさん』連載がスタート。自身の家族のエピソードをモチーフにした主婦の日常や子育ての奮闘をリアルに描写、幅広い層の読者から支持される。2004年『毎日かあさん(カニ母編)』(毎日新聞社)で第8回文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞受賞。2005年『毎日かあさん』『上京ものがたり』(ビッグコミックス)で第9 回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。2011年『毎日かあさん』で第40 回日本漫画家協会賞参議院議長賞を受賞。2013年ベストマザー賞に輝く。著書も多く、『この世でいちばん大事な「カネ」の話』『ダーリンは72歳』『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』などを刊行中。
公式ウェブサイト「鳥頭の城」 >
