犯罪や虐待、事故の被害者になる高齢者が増えている。
次は被害者側の話をしたいと思います。高齢者は犯罪者より被害者になる可能性が高いというのが犯罪学の学説です。先ほど申し上げたように、犯罪は若者の行為であって、高齢者は犯罪の被害者になるというのが過去の認識だったからです。現在、実は犯罪は戦後では最低レベルまで減ってきているのですが、高齢者が被害者に占める率は徐々に上昇してきています。みなさんがよくご存知なのは、いわゆるオレオレ詐欺ですが、オレオレ詐欺では約8割の方が高齢の被害者だと言われています。これは被害を届け出た数ですので、オレオレ詐欺に引っ掛からなかった方も多く、そういう方はほとんど警察へ通報しませんので、表に出ていないオレオレ詐欺の数はかなり多いと思われます(実際には詐欺未遂ですので、犯罪です)。このように高齢者をターゲットとした犯罪が増えています。それからもう1つ、これはあまり注目されていないのですが、虐待されている高齢者の数も最近うなぎ上りです。ご存知のように児童虐待、夫婦間暴力のDV、これも相談件数で各機関がパンクするほど急上昇してきているのですが、そのような中で隠れた虐待が高齢者の介護の途中に発生しているのです。また、高齢者が交通事故に遭う例、特に夜間の歩行中に高齢者が交通事故に遭うというケースが非常に目立っています。夜間の散歩をするときは、蛍光塗料を塗った服のように何か光るものを必ず身に着けるなどの予防も必要です。高齢者がなぜ事故に遭うのかは、当然ながら判断能力、情報処理能力の低下によるところが大きいです。横断歩道を渡るにしても、左右から車が来ている訳ですから、一方の方向から来た車だけに集中をしていると、逆から来ている車にはねられるし、手前の方の車だけに気を付けていると、もう1つ向こうの車にはねられるというふうに、高齢になると情報処理能力が低下します。高齢者が横断歩道を渡るときに、青信号でもなかなか渡り切れない人も結構いることから、社会整備にも問題があると思います。
逆に、高齢者の交通加害も最近非常に目立っています。よくあるのがアクセルとブレーキを間違えたというケースですが、将来的には店舗などもコンクリートのブロック塀などを作って、直接店内に突っ込まないようにする防止策を取るべきではないかと思っています。アクセルとブレーキを間違えないような車が開発されていると聞きましたが、そうしたことも必要だと思います。
高齢者の被害を少なくするためには、高齢者の見守りネットワークを各自治体が行っていますが、このようなシステムをはやく確立されるようになってほしいと思います。地域社会の人的ネットワークというか、やはり人間関係を地域で改善しないと、孤独や居場所がない、頼れる相手がいないと、そういうことがさまざまな高齢者の社会問題を引き起こしてしまうからです。今日会場に参加している学生さんや若い方は、今後の人生においてそういう人作り、人間のつながりを強化していくべきと思います。
